人は、

見たことのない姿形をしている子を「神の子」または「忌み子」として扱う。

私は後者として扱われた。

私は「暴力」を。私は『暴力』を。私は【暴力】を。

私は様々な暴力を受けた。

辛く、甚く、苦しく、惨めで、悲しくて、怨めしくて、恨めしくて、悪くて、嫌で、

「もうこんなことされたくない」
「なんのために」
「なんのために」

「どうしてわたしは、」

「わたしは、」

「死ねないの?」

それは、許されなかったから。
私が許さなかったから。

私のお腹に赤子がいることがわかった、だから私は生きた。
精一杯に。この子のために。

やがてこの子は生まれた。
この子はすくすくと育っていった。

子供は何をしだすかわからない。それはどの世界も同じことだ。

あの子はどうやらこの世界でやってはいけないことをやってしまったらしく、それは神の怒りに触れるような行為だったので、人身御供をしないと多くの人々が死に絶えると言われた。

本来はその行為を行った本人が人身御供の贄にならないといけない決まりらしく、あの子を贄に捧げようという話を偶然に耳にした。

それに私は必死に抗議した。

初めての造反にとても驚いたのだろう、彼らは私の意見を聞き入れ、私が変わりに人身御供の贄になれと言われた。

この子のために死ねるのなら本望と。私はそれを受け入れた。

儀式決行の日。
あの子を置いて初めて外の世界に出た。

月を初めて見た。星を初めて見た。
キラキラと輝いていて。わたしの目には勿体無いもので。
最期にこの景色を見れるだなんて、贅沢だなと思った。

粛々と儀式は進んだ。

夜明けと共に棒に縛られた私は炎の中に身を捧げる。

空が白み始めた頃、ふと、あの子の声がした。あの子がそこにいた。
あの子は泣きながら、ちぎれた足かせを引きずりながら、儀式の場にやってきた。

あの子は叫んでいる。

「おかあさん、ごめんなさい。
 わたしが、わたしが、
 おかあさんが、しあわせになるようにって、
 あんなことを、したから、
 おかあさんが、しんじゃうなんて、いやだ、
 いっしょに、ここからにげて、」

日が昇る、光が訪れる。

私はこの子を置いて死んでしまう。

初めて『死にたくない』と思ってしまった。
初めて『逃げたい』と思ってしまった。

俺は二度目の造反をした。精一杯あがいた。

「儀式の邪魔をするな」と、眼の前であの子が刀で切りつけられた。
あの子は倒れ、動かなくなった。

たくさん叫んだせいで、とても息苦しい。
意識が朦朧とする。

俺の身体はとても非力だった。

最期に見た、朝焼けは、とても、綺麗だった。

俺は、死んだ。


目を覚ました。目の前には桃の色をした髪の女性がいる。

おっとりとした口調でその人は私に話しかけた。

「突然でびっくりしているでしょう?
 そんなに怯えなくても大丈夫よ、ここはそんな世界じゃないから。

 あのね、お願いがあるの。

 この世界の神様として、ここでお仕事してくれないかしら?
 わからないことがあったら私がサポートするから、
 私のサポートは百万馬力よ。

 どーんと大船に乗った気持ちで……あら?」

涙が止まらなかった。何とも言えない感情が一気に押し寄せて。

わたしを抱きしめ、その人は言った。

「辛かったでしょう。ここでは貴女の好きなように生きて。
 貴女は幸せにならなきゃ駄目なんだから、
 このお願いは断ってもいいのよ。」

断っても、わたしには何もなく、それにどこにも行く宛はない。
わたしは喜んで引き受けた。精一杯、このおつとめを果たなければと思った。

桃の色をした髪の女性はトゥリーザ・マルティアと名乗り、
「私のことは、とりあえずトワコと呼んでね。」と言ってくれた。

そして、同僚となる人を紹介された。
あの子と同じくらいの背丈の年端も行かない子供が、
黙々と何かの作業を進めている。

「あの子、私達はソウスケって呼んでいるの。
 あの子、感情が乏しくてうまく仕事ができないようで、

 まずは、そぅちゃんのお仕事のお手伝いと
 そぅちゃんへのご教授をお願いしてもいいかしら?」

わたしは勿論ですと答えた。

「そう言ってくれて、私、うれしいわ。
 早速、お仕事をしてもらおうと思うのだけど…
 その髪型だと色々と不便じゃないかしら…?

 うふふ、なら、私が切ってあげます!

 一度、人の髪を切ってみたいと思っていたの!」

正直、今までこの髪型で過ごしてきたので、今の状態でも問題はないのだが、トワコさんはとても髪を切りたいというような表情をしている。わたしは髪を切って貰うことにした。

すごく明るい。

前髪がこんなにも短いと眼の前がこんなにも明るいものなのかと驚いた。

後ろの髪を切り始めた頃に、先ほど紹介されたソウスケという子が近づいてきた。

その子はわたしの切っている途中の髪を触ってこう言った。

「ふわふわ。」

これが私に話しかけてきたソウスケさんの初めての言葉。

「トワコさん、

 あの、
 あの、切っている途中に申し訳ないのですが、

 この子、この長いところが気に入ったみたいで、

 はい、

 ここはこのままにしてもらってもいいですか?」

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